高い空を泳ぐように飛んでいく鮎の夢を見る/霜天
 
た。象徴するかたち、君を。薄く玄関の扉を開けると、朝が侵攻してきて。僕らはいつも隠れるようにするしかなかった。そう、日記には書いてあった。


窓辺には椅子。椅子と白い犬。そんなふうに共通の記憶は始まる。家中の窓を全て開けて、新しい自分になった気分になる、そんな想像の中の背伸び。隣では、影が寄り添って眠っている。東から西へ向かう連絡船の上で人が一人消えたのは、もう十年以上も前のことだった。誰も気付かなかった呼吸の行き先。いつかあの海に沈んでみたい、そう言ったのは誰だったか、僕だったか。深い海のそこから見る空は、きっと生まれていくイメージに似ている。


一昨日あたりから、君の姿を見ない
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