高い空を泳ぐように飛んでいく鮎の夢を見る/霜天
 
ない。三日ほど前から、少しずつ呼吸を薄くしているせいかもしれない。ただいま、と君は窓から飛び出して、長い長い道の真ん中で踊るように流れていく。自由、という。誰かがそれを繰り返し叫んでいて、ただ縛られているのを実感して。心の端に重力を結びつけると、上手い具合にバランスが取れる。あの橋を渡るときも、君がいなくても、もう平気かもしれない。昨日よりも笑った。少し多く、笑った。高い空を泳ぐように飛んでいく鮎の夢を見る。もう、呼吸も苦しくはない。



それがとても、当たり前のことのように。
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