遠い眺望/前田ふむふむ
を濡らす。
岩は、滑らかに色づき、門は、やわらかく貞操を守る。
ふかく暦を染めた聖地は、昏々とみずに沈む。
熱い祈りは途切れることなく、
あらい街の吐息は、隈なく屋根を持たない底辺まで、
止まった河に、足を浸かるが、
古代の汚れを洗い流すことができず、
エルサレムの旅立ちの門は、
終わらない冬を彫りこんで、
静かに、愁然としたみずに、もえている。
子供たちは、青い空の優しさを知らず、
遺恨の歳月を、父母の貧しい窓に学び、
高貴な神学を、沈む夕陽を飲みこんだ、
兵士の推敲のなかで見つめる。
三つに束ねられた孤高のうねりは、
正確な平行線を引いて、図形は宴を、交じ
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