遠い眺望/前田ふむふむ
 
に酔ったカーストの色彩たちの湿り気が、
熱い鼓動を叩き、
ふかみどりに蔽われた、
森の涙腺を、彼は走ったのだ。
その戯れる浪漫を。

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8月某日、
長崎の空は、夏を、灰燼に砕けた街にくばり、
群青を、更に深めて、視線を、草莽の皮膚に溶かした。
敬虔な黒い顔をした女たちの、短い行列が、
聖地に背を向けて、ひたすら、腫れた稜線を歩む。
ひかりを避けながら、薄れゆく意識のなかで、
神の福音を渇いた眼に、飲み干して。
女たちは流れる。
失われた、わが子のみずを求めて。

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10月某日、
ごく稀な、砂を潤す白い驟雨が、
信仰の壁を濡
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