軌道/葉leaf
侵略する
大地は軌道を持たないので
苔にやさしい
僕は軌道を持つので
苔を踏みにじる
僕は街を行く
人とすれ違うたびに
軌道は銀線を浮き立たせる
僕は野を行く
樹木と出会うたびに
軌道は青く濡れてゆく
僕は電車に乗る
場所が連なり溢れるところへと
電車は向かってゆく
それぞれの場所からは
未軌道がゆるく噴き上がっている
僕のそれぞれの腕が
それぞれの皮膚に当てはめていくことで
未軌道は軌道になり
生きた柵として
僕と場所とをつなぎはじめる
僕は自転車で市街地へと向かっていた。その日は建物の肌がいやに眼球に触れてきた。足は無数に円を描いたが、円は
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