軌道/葉leaf
 
円は太かったり細かったりした。笹谷から泉、泉から森合へと僕の髪の毛は進んで行った。もちろん髪の毛と一緒に僕も進んで行った。信号で止まるたびに、軌道は僕の肋骨によどみ、僕の彩度を測っていった。市街地に着くと、軌道は自転車から降りてデパートへと入って行った。僕は慌ててそのあとを追った。

僕は眠る
僕の網膜はちぎれて漂落し
軌道のかたちを模倣する
僕の血液は街道に流れ込み
軌道の軌道を希釈する
僕の夢は林状の軌道に沈み
真っ赤な気流だけで頭皮と通信する
僕の無数の淡い指先は
軌道に刺さり記憶のように蓄電する

季節が落ちるところまで
僕は落ちてしまったようだ
だが軌道は落ちずに分枝した
波立ちを固着させたまま
水を撫ぜて水を撫ぜて
死んだ僕の溶け落ちた脳の先に
一本の裏切り続ける坂として
一本の裁き続ける草として

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