三つの街?浮遊する断片/前田ふむふむ
胎児を跨ぎながら、ふたりの男が罵り合っている。
左手にギターをもった男が
「わたしがひきとり育てよう。」
右手に法律書をもった男が
「わたしが人知れずに葬ろう。」
見知らぬ場末の路地の溜まり場は、
煌々と孤独な月に揺らめいて、
新しい文化の産声が、
鮮烈に、溶けだす朝を待っている。
胎児のまわりを、
十代の伝書鳩が無邪気に旋回して。
3 戦慄の街
石の巧みを、縫い合わせて、
若い湿原に、白い街は、静かに浮ぶ。
聡明な神学の祈りを浴びて。
避暑の庭の意匠を、照らす灯台は、
草莽をもてあそび、渇きつづける
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