三つの街?浮遊する断片/前田ふむふむ
 
    1 追憶の街

(そこを曲がると目的地だ。
(たくさんのヒヤシンスの花が僕たちを見ている。
(そう、あの青い塔のある丘まで競争だ。
(君の長い髪がそよかぜにのって
(春を歌っている。
(僕が勝っては駄目だと、
(袖を引っ張った君は
(やさしく、はにかんだ。

(太陽の日差しがおだやかな丘のうえで
(かすかな涙が君の頬をつたった
(大丈夫だよ
(僕が君の涙と涙のあいだの夕暮れを
(無限の花で埋め尽くしてあげるから。
 ・・・・・・・・・
廃墟になった街を、走り抜ける自動車の窓から、
夜をなめるように、あつい劫火がみえる。
わたしは、曲折した夢のなかへ、微
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