薬理記録 10/19・20/六崎杏介
している。美しい女だろうか、と考える。
色欲が、揺れている。頭上30cmのメトロノーム。絞首台のロープの様に、甘美に揺れている。
輪廻の雫を持たない私は、ぼんやりと煙草の煙が蛇行するのに眼球を預けて、溶け出す。
PM08:22
極めて冷静に、自室を眺める。吸い殻がこぼれる灰皿。空き缶の類。薬の残骸。かつてサンドウィッチであった物。
かつて、日光が差していた窓。そこからアルコールの様な夜が流れ込んでいて、溺れてしまう。
サイレースを服用したTVの明かりが、サンドウィッチや、全ての死者に、世界の夢を見せている。
万象があるべき墓場に固定されている。私はベッドの上で遺跡として横たわり、
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