薬理記録 10/19・20/六崎杏介
 
の妊婦がそれを愛用するだろう。そうして私は朝を願う。
官能的に、開いた蝙蝠傘が雨をねだっている。


十月二十日

AM06:30
こびりついた夜の、墨書きの遺書を、霧が洗っている。

PM01:12
襖の向こうにいた、分度器を玩ぶ座敷童の前髪が、窓枠からの入射角を暗示した。
オーディオが畳の目に落ちて薄く積もってゆく。

PM05:40
死んでゆく、夕食のサンドウィッチ。緩慢なアーチを越えて、彼岸へと、彼岸の石へとなってゆく。
陰気な、真摯な、手向けられた祝詞。無数の針が、四角く切り取られスクラップされた棺に刺さる。
絶対無が氾濫する。天の頭蓋からそれは溢れ出して
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