ぬけがら/九谷夏紀
 


けれどもぬけがらとしては

ただまどろんでいたいだけで

自己主張などしない

私はあまりにもぬけがらになりきってしまっていて

自分がぬけがらであるとは思わずにいたのだ

気付いたのは

私の右手が

つよく握られたとき


ぬけがらがざわついて

そのざわつきはぬけがらなりの危機感のようで

抵抗力までもあり

その歪みかたと衝突に

ぬけがらの空洞をみる


そのざわつきの波は大きく

変わらぬ環境を置き去りにして

目などはもうつぶってしまって

その波に呑まれるままに身をあずけてしまいたい

(おそらく波はから
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