図書館に通う/吉田ぐんじょう
な材質だった
そくそく という足音
何か無性に歯がゆいような
居ても立っても居られなくなる
病院のときは血圧を測定したんだった
無駄に何回も
そんな事したって何もならないのに
父はあんなにも静かに
あの時あそこで眼をつぶっていたのに
ふと泣き出しそうになったので
そこいらにあった本を抜き出して開いた
それは猟奇殺人事件のレポートだったが
構わず読んだ
隣に立っている女の子は
手芸の本を読んでいた
日暮れてから家に帰り
おせんべいの缶にとっておいた
思い出の手紙や葉書やダイレクトメールを床に積み
国が認めた公的な書類を探した
わずかに偉そうな感じを受
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