図書館に通う/吉田ぐんじょう
を受けるものを選り分けてみた
残ったのは年賀状だった
その年賀状は国から届いたわけではない
遠くに住んでいる伯母さんからもらった
年始に投函する葉書として
広く認められ使用されているものなのだから
国の偉い人だって年賀状は使うと思うから
大丈夫だろうと思ってそれをバッグに入れた
伯母さんの字はとても綺麗だった
翌日の昼
水泳選手のミセスにそれを見せると
彼女はすこし笑った
魚が気泡を吐き出すときみたいだった
それを見て
ああ何時かこの人の泳ぐさまを見てみたいな
と思った
身分証明が出来ないわたしは
半透明のプランクトンのようだ
いっそこのミセスに連れられて
深海で小海老にでも食べられてしまいたい
ミセスは笑い止んだ後
伯母さんは字が綺麗でらっしゃいますね
と言ってくれた
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