silent moon/いとう
けて
そしておもむろに
ある方向を指さす
六本木交差点芝公園方面に見える
東京タワーに向かって。
魔法は成就された
彼女は確かに魔法を使ったのだ
そう。
東京タワーのはるかかなた
38万km離れた
大きくて白い
満月が
僕の目に映っている
静かに
そして
僕の手の届かない場所で
「月って言うの」
「つき?」
「うん。私の名前。月なの」
僕はまだ彼女を見ることができない
振り返ると
彼女が消えているような
そんな
予感に囚われて
そのまま
「また会えるかな?」
そう尋ねると彼女は
「これあげる」と
今日出会ってから僕が書いた
手帳
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