silent moon/いとう
そんな才能を
どこで手に入れたのか
なんておそらくは
いや
その考えは確証に近かったので
ためらって
僕の口からは言えずにいた
失うことで何かを手に入れてしまうというのは
もしかしたらとても悲しいことなのかもしれない
見とれていた僕の主観的な時間の流れだけれど
彼女はとても長い間踊っていて
結局僕はまったく踊らずに
彼女を見続けているだけだった
そしてこれも僕の主観的な見解だけれど
フロアにいる男どもの半分はそうしていたと思う
少し優越感。
男なんてたいていこんなふうに単純なのだ
「疲れた。お腹空いちゃった」
簡潔な言葉で僕を動かす彼女
でもそれ
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