silent moon/いとう
それは全然イヤじゃなく
彼女が僕を動かしていることを幸せに思う
幸せなその理由はとても単純で
彼女が僕を見て笑っていてくれるからだ
クセのない笑顔で
僕の目を見つめて
僕の手を取ってくれているからだ
さっきも言ったけど
10年若かったら本当に惚れてるね
どうしようもなく
惚れてしまっていたね
「外に出よう」と
手帳には書かずに身振りで言うと
彼女も言葉には出さずに「うん」とうなずいて
そして僕たちはまだ暗い六本木通りへ
少し歩いて交差点のそば
ビルの5階にある「一誠」というお店
朝5時までやってる和食屋
おいしくて日本酒も豊富で内装もいい感じ
時計を見
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