うつくしいせかい/キメラ
うつくしいせかい
それは雨上がりの紫陽花が
ブローチのようにも見えた
あのひのきみ
うつくしいせかい
靴ひもをしばる指先に
生活へのかげり
夕方のきみよ
歩ける先には
うつくしいせかいがあるの
眩しそう
瞳をほそめたきのうは
泣き通しの雨だった
遠雷だ
焼き付けた真夏の足先
永年月
結びあった名前が
よくよびあう
ふり返るもせつなく
想いで
散らしあう
うつくしいせかいには
水があり
春のこえは
時折きいたという
はなれた街影から
目尻を合わせ
すべての景色が
君を連れてくる
それは躓いた日中の
太陽とも違い
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