はてしなの響き 【音編】/−波眠−
言われてようやくそれらの音を思い出そうとしたけれど、
その音だけを切り離すことはできなくなっていた。
きっと止まない音はもはや音ではなくなっていたのかもしれない。
吸っては吐く音を煩わしいとは思わないように。
だからその音が枯れれば、すぐはっと顔を上げることもできる。
いや、できなければ次がないことも、どこかで知っている。
話が少し逸れたね。
だから僕のなかでは此処は音のない世界に等しい。
それだけに人間が創り出した音は過剰にキャッチしてしまう。
おそらく一目見ただけでは人が住んでいるのかいないのか
見分けがつかないような風景でも分かる。耳で分かるのだ。
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