星座の下で/チアーヌ
 
雪道を滑らないように歩きながら山の寺へ向かう
お姫様が松の木に恋をした伝説が残る谷間
キスをして抱き合うと
どんなに寒い夜でも
雪さえも
暖かかった

この恋がいつか消えてしまうこと
もう思い出せないくらいに色褪せた記憶になること
なぜかいつも終わりを予感して
手を繋ぐたび涙が出そうだったあの頃

そして今
キスだけであんなにドキドキできたことを
わたしはやはり上手く思い出せない
そしてあれからわたしはもう何人とキスをしたのか
思い出せない
それに今はもう誰とキスをしたって
大してドキドキしない
少なくともそのことに大きな意味など持たない
それが大人になった
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