独学の数学者また/佐々宝砂
いることに気づく、なんて読み方もできる。プロ歌手になりたいと思って努力してやっと売れたと思ったら、今度は素人くささを求められる、なんてのにも似ている。自力で壁を越えるのはたいへんだが、越えてもまだまだ難問が待っている。
独学の数学者は、独学であるうちは幸福だ。独学でなくなってなお、幸福な数学者でいられるか否か? そもそも数学者であり続けることができるかどうか?
独学は、独学であるうちは精密さも完璧性も独自性も求められない。好き勝手にやってりゃいいのだ。間違ってても誰も怒りはしない。詩にしても同じことで、駄作を大量生産しても誰もとがめない。やりたきゃ勝手にやってなさい、てなもんだ。ひ
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