石と旅する/吉田ぐんじょう
・
ひとあし歩くごとに
わたしの身体からは石が落ちます
からからに乾いた石は
薄い色をしています
わたしはそれを
さらさらかちかち と踏みしだき
疲労し続けましょう
名前を忘れるまで
それはとても素敵なことです
・
川は昨夜の雨で増水しています
洗濯物が揺れています
女の人が
幸福について思索しながら
旦那さんの夕食を作っています
・
時計が止まったので
今が何時かわかりません
でも構いやしないのです
元々時間なんて
信用していませんから
金属製の腕時計を外して
遠投したつもりだったのですが
遠
[次のページ]
戻る 編 削 Point(12)