視界が開ける瞬間 ??望月遊馬『海の大公園』について/岡部淳太郎
 
回帰をくりか
えしている。ひとたび、円形が閉じると、
楕円のてざわりが、うすく流れて、その前
ぶれをながされてゆくままに、かたく変異
してゆき、そのまま、白さがのこってゆく。

(「回帰」部分)}

 恐らくここには、作者の若さゆえの未来への不安と希望が投影されているのだろう。「前ぶれ」という言葉が巧みに挿入されているところからもそう感じるが、深読みのしすぎであろうか。「円形からはなれた白さだけが、ひとりあるきをはじめ」やがて「そのまま、白さがのこってゆく」というのはちょっと感動的な場面だ。この「円形からはなれた白さ」とは、語り手の中に残っている純粋さのようなものの象徴であるのかも
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