視界が開ける瞬間 ??望月遊馬『海の大公園』について/岡部淳太郎
海」そのものについて語ることは出来ず、せいぜい「海」の周辺のものたちを語ることしか出来ないのかもしれないし、だからこそ観念的な言い方にならざるをえないのかもしれない。「白い円形の物質」がいったい何なのか、これはもしかしたら物理的なものではなく、徹頭徹尾観念的な、語り手の「寄る辺ない感情」だけが見ることが出来る精神的なものであるのかもしれない。あるいは表題となっている「回帰」の「回」の字の形にひっかけたものだという、多少アクロバティックな解釈も可能であるかもしれない。
{引用= 円形からはなれた白さだけが、ひとり
あるきをはじめて、なおもくりかえし、こ
こちを確かめるかのごとく、回帰
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)