視界が開ける瞬間 ??望月遊馬『海の大公園』について/岡部淳太郎
現れる。
*
望月遊馬詩集『海の大公園』(poenique)は、そんな視界の開ける瞬間を読む者に提示してくれるすぐれた詩集である。表題に「海」という言葉が掲げられているように、いつもどこかで海が意識されている。冒頭の「見えぬ先に見えるもの」という表題が象徴的だ。ここではまだ海は見えない。まさしく「見えぬ先に見えるもの」である。
{引用=わたしたちの草はめぶき
北から南へ
双子のうすい糸を引き分けるさきに
なにがみえるのだろう
口のうえの火を辿り
たぐりよせた方角の先に
歩を進めども
わたしたちは
わたしたちの部屋にひらかれる
年月の哀愁のうごきを
目撃す
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)