視界が開ける瞬間 ??望月遊馬『海の大公園』について/岡部淳太郎
バ蝶」全行)}
詩集の中でももっとも短くまた部分引用が困難なため全行を引用したが、ここで語られていることはまさしく「視界が開ける瞬間」そのものである。「海の音がする。波の狭間の貝殻に耳をあてた感触が腹の底から浮いてきて、海はどこにあるのかと、ひがしを見た、みなみも見た、どこでも見た。なんもかも見た。そうして、海がないことを知った」と語られている。あれほど詩集全体を通してまだ見ていない「海」について言及していたのにかかわらず、「海がない」のだと言う。詩の終り近くでは「そうして、境界を取り払った時には、私と、私以外との境界が完全に失われ、そうなった私には永遠に波の音が聞こえ続けることだろう」と
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