視界が開ける瞬間 ??望月遊馬『海の大公園』について/岡部淳太郎
 
いにもかかわらず(詩集というものの多くはそうだ)、ひとつひとつの詩が互いに関連性を持って響き合っているような印象を受ける。これらの詩を書く原動力となっているのは「寄る辺ない感情」であり、キイワードとなるのは「海」である。また、ここまでは引用していないが、詩集のそこかしこに「白浜」「団地」などといった同一の単語が頻出するのにも注目したい。恐らくこれらの単語は作者の実体験と密接にかかわっているものなのであろうが、単なる個人的な思い出から語られているのではなく、ひとつの「詩の中の言葉」として自立しているのがいい。



 この小文の最初に私は本詩集について「視界の開ける瞬間を読む者に提示してく
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