吉岡実と非在の場所/ななひと
 
う。

  一個の異様な物体のまえで
  見えないもの 把握できないものに
  おびえたりいらだったり
  叫喚するものたちがたしかにいる
       (「雪」(『静物』所収))

「異様」な物体。それは「見えない」し「把握できない」が、「おびえ」や「いらだ」ちを引き起こすものとして確かに存在している。吉岡実の詩の中で、記述することも、代理=表象することもできないにも関わらず、厳然と存在する、ただの〈存在〉が、ものすごい存在感を持って現れてくるのはこうした言葉によってだ。
それは単に〈存在〉するだけのものであるからこそ、圧倒的な存在感を発揮する。

  殺戮において
  
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