吉岡実と非在の場所/ななひと
れが確証するだろう」という反語が指し示すように、誰も証明する位置に立つことはできないものとしてある。自己の位置は、〈時間〉の中で、自分にも、他人にも、決して言及することはできないのだ。
かたちのないわたしの口がつぶやく
むなしいわたしの声の泡
かたちのないわたしの眼がみる
(「挽歌」(『静物』所収))
だからこそわたしの口も眼もはかたちを持つことは決してできないのである。
こうした、どこからも記述できない位置にいることに自覚的な吉岡実の詩は、同時に、どこからも記述できない存在を、どこからも記述できない位置から、突然出現させることを可能にしてしまう。
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