生成する葡萄状の意味?中原紀生「葡萄状連詩」を読む/ななひと
 
殖していく。「顔のない初潮」は「統治者」のいない「存在」のありようであり、やはりこれも「妊娠」の能力の付与、という時間と肉体性への省察へ連乗する。「穴(セックス)」は、存在せざる存在、不在を孕んだ存在、そのものだ。

  何者かによってデッサンされた石膏像
  陰影に意味の残滓を留めて
  破られた楽譜 弦の切れたヴァイオリン
  不在の 支配者の 不毛の
  関係づけられた 時間の他に
  そこには何もない

根元を持たない匿名の「デッサン」―それは存在を写像したものであるが「陰影」によってしか「意味」化されない不在の存在である。「楽譜」は破られ、「弦」は切られ、時間の統辞性、
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