畜生/松嶋慶子
 
松嶋慶子

「猫は 所詮畜生なんやから」

生前の祖父の口癖
餌は
人間が食べ終わったあとの身一つ残されていない 骨
そして 鍋底にわずかに残された味噌汁 をかけた冷ご飯
鰹節など、まちがってもかけてはならず
今ではタブーとされている、鶏肉の骨などもやった

飼い猫のミツは
魚の骨を難なく食べ、
猫まんまをうまそうにたいらげた
硬い鶏の骨に至っては、なんとかして噛み砕き、髄を大事そうに喰んだ
私は幼くして、骨の芯に髄なるものが存在することを知った

子供が4、5匹生まれると、
中に必ず弱い子がいる
たくましい兄弟たちにはねのけられているのを、私がミツの乳房に戻
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