畜生/松嶋慶子
に戻してやろうとすると
「よけいなこと、せんでいい」
そういって、祖父は私を制止する
そのうち、弱い子猫は衰弱し、歩けなくなった
すると、ミツはその子猫の首ねっこをくわえて、連れて行こうとする
私は泣きながらミツを抱き止めるけれど、また祖父が
「よけいなこと、せんでいい」
そして
「猫は所詮、畜生なんやから」
というのだった
腕の力をほどくと
ミツは、弱った子猫をくわえて、縁の下へと消えていった
幼い私にはわかっていた
縁の下は、暗闇の世界、黄泉の国への入り口があるのだと
何時間か後、戻って来たミツは、せっせと毛繕いする
我が子を始末し、片付けたのだ、と
聞きた
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)