これは詩ではない。/佐々宝砂
風がむらさきの砂を運んでくる。あたしはひとりで立っている。この荒野に、ただ、枯れ木といじけた草だけが生えているこの荒野に。兄も姉ももういなくて。ただ、ひとりで。
(2)
景気のよい破裂音がほしかったのに赤い風船はへなへなとしぼんでゆく。せめてどこかに飛んでゆこうという覇気はないのか。なまぬるい水があたしの中にまで押し寄せてくるめかりどき。
カップラーメンに哲学の滓を浮かべてあたしはブック・オフの百円本を読む。あたしもあなたも取り替え可能だと構造主義の誰かさんは言うし私は私で私のことを私のために私の言葉で私なりに書くのだと君は言うけどつまりつまるところつまらないものはつま
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