踝 (くるぶし)/shu
月明かりに浮かぶあなたの鬼微笑
「わたくしの知らぬなにかがあるであろう」
と迫るあなたの問いに考えるまもなく
突然くるぶしからなにかが噴出し
嗚呼嗚呼と両手で押さえるが指のすきまから溢れ出す
忘れ去られた記憶の雫か
忌まわしき瘡蓋の剥がれ落ちる血か
過去の終着駅に独りぽつんと残されたような
悲しみも切なさも通り越した透明な世界に投げ出され
もしやここは月の裏側かと力なく呻きたれば
ぶるぶると頭を振って正気を取り戻し
やおら飛び起きて溢れ出るものも構わずトンカチを
ひったくると
「やあやあ おのれのくるぶしも叩いてくれようぞ」
とあなたの足首
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