断髪式 /服部 剛
 
鏡に映る「私という人」は
だらしなく伸びた髪を 
ばっさ ばっさ と刈られていく 

( 少しくたびれた顔をしてるな。 
( いつのまに白髪が混ざりはじめたな。 

幼い頃 
日向(ひなた)ぼっこの床に新聞敷いて 
ちょこんと坐った背後から 
婆さまが握る手動ばりかんで髪を引っ張られ 
小さい痛みに震えてた 

( 鏡に映る、三十歳(みそじ)の男(ひと)よ 
( お前はあの頃の「ぼくちゃん」と 
( いい加減おさらばしたであろうか・・・ 

店内には
花柄のTシャツにミニスカートのお嬢さんが
ほうきを手に刈られた黒髪を掃いている 


[次のページ]
戻る   Point(7)