「 きいろいし、み。 」/PULL.
わたしの婿になるかもしれない男は、
針金細工のように細いからだと、
白い肌と手をした男だった。
手を触らせてくださいと言うと、
男はすこし恥じらい、
こくりと頷いた。
男の手は細く白く、
どこまでもなめらかで、
むかし婆が触らせてくれた、
セルロイドの人形の肌を彷彿とさせた。
俯き加減にこちらを見る男の頬が、
とてもやさしくやわらかい。
「はい。」
隣室で待つ両家の家族に向かって、
返事をすると、
それで決まった。
十五。
後はつつがなく両家の間で話が行われ、
結納やその他諸々も滞りなく済み、
祝言の日取りが
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