「 きいろいし、み。 」/PULL.
りが決まった。
祝言は次の季節の、
風の強い日だ。
結納が済むとすぐその日に、
夫はわたしの家に入った。
それがわたしの家族の営みであり、
わたしの家族になるということだった。
一六。
一日のすべてを終えると、
わたしは夫の白い頬や手を撫でる。
夫の肌はセルロイドのようになめらかで、
どこまでもやさしい。
そしてわたしはやわらかく夫を迎え入れ、
夫はなめらかに入ってくる。
一七。
父がどんな肌と手をしていたのか、
どんなわたしの父であったのか、
もう何も思い出せない。
ただひとつ、
父はあの白い壁
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