「 きいろいし、み。 」/PULL.
わかっている。
ただひとつ、
きいろいしみのそこだけが、
父の肌とは違っている。
わかっているのだ。
九。
ある夜、
堪らなくなり、
壁に頬を寄せた。
壁は想っていたよりもやわらかく、
わたしを受け容れてくれた。
あたたかくやさしい壁、
それはどの父よりも父らしかった。
涙が止め処なく溢れ、
壁は止め処なく涙を吸った。
吸い取る事に壁はやさしくなり、
やさしくなる事に涙は溢れた。
十。
振り返ると母が立っていた。
母は泣いていた。
わたしを強く抱き締め、
母は言った。
「いいのよいいのよ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(11)