「 きいろいし、み。 」/PULL.
のよ。
泣いていいのよ。」
そう何度も言いながら、
母は泣き続けた。
母の涙を見たのは、
はじめてだった。
はじめての母の泣き顔は、
いつかの婆の顔に似ていた。
十一。
ふたりで壁に頬を寄せ、
その夜はいつまでも泣いた。
壁はいつまでも涙を吸い、
どこまでもやさしかった。
十二。
季節は滞りなく変わり、
わたしのいつもの営みも、
滞りなく続いた。
そうしてわたしは婿をもらうことになった。
十三。
わたしの見合いは、
親戚の叔母がすべて取り仕切り、
壁のある部屋で行われ
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