「 漬けられた夜。 」/PULL.
 



受け取りにサインをしながら、
差出人の名前を確認する。
妻からだった。

配達員が段ボールを抱えて戻ってくる。
彼は嫌みに白い歯だけではなく、
嫌に白い肌もしていた。
汗で張り付いた白い制服が、
同化したもうひとつの皮膚のようだった。

きっと乳首も白いのだろうと見ると、
やけに黒い乳首が、
黒点のようにふたつ、
白い制服の胸から透けて見えた。

彼はバットマンの親戚か、
その又従兄弟なのかもしれない。

「お荷物はこれだけです。
 本日はご利用ありがとうございました。」

玄関に段ボールを置き、
そう一礼すると、
配達員になりすましたバ
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