「 漬けられた夜。 」/PULL.
たバットマンの一味は、
そそくさと帰って行った。
後には段ボールと、
わたしだけが残された。
三。
妻からの配達物ははじめてだった。
いや。
あの日以来、
これが妻から来たはじめての、
「なにか」だった。
三年前のあの日、
水戸の学会に出掛けたきり、
妻は帰って来ない。
それからずっと、
妻からは何の連絡もなく。
わたしはこの部屋で、
ただ彼女を待ち続けている。
あの朝、
晴れやかな顔で、
出掛けて行った妻の顔が、
今も忘れられない。
あれが彼女を見た最後だった。
四。
段ボールを抱え
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