犬の日々/岡部淳太郎
もが忠実に
自らの犬として
自らの主人として 生きていた
厳しさが
知らずに刺さった棘のように
骨の苦しみを私に与えた
陽に照らされて 灼かれて
私の舌はますます長く伸びていった
黙っていなければならないと
そう教えられたので
私は口を閉ざして動かずにいた
だが 誰の眼も相変らずそれぞれに
あらぬ方角に向けられたままだった
私のすべてが
犬のようだった
遠い街並の中に
私の求めた大切なものがまぎれているかと思い
飢えたように視線を集中した
だが 何も見つかりはしなかった
ただ多くの人びとが
痩せ細った心を持て余して
私と同じように
さまよい歩いて
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