月に負け犬/粕身鳥
 
ないといわれても、私の中の私の存在価値は変えられなかった。
それは今もそうだ。

思春期に入ると悲しみや苦しみが憎しみに変わった。
同時に、殺人願望が芽生えた。
殺せば何も言わなくなる。私は侮辱を受けなくなる。
そう思いクラスメイトを殺そうとした。(妄想の中で幾度その返り血を浴びたか)
首を踏みつけ、胸にボールペンを刺そうとした。
しかし、どうしてもその胸を刺すことができなかった。
それから私は、自ら人間との接触を絶った。
この瞬間、私は『負け犬』になった。

それからは人の目が気になり、怖くてたまらない。
周りの人が私を見て笑ってる。
あの人たちは私の事を「気持ちの悪
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