遠藤周作の墓前にて。/服部 剛
せながら。
「 遠藤先生、あなたが作家として生涯を生き抜き、
探し求めたものは一体何だったのでしょう。 」
右を向くと白い石像があり、息絶えたイエスがマリアの膝の上に
抱かれている。左の掌(てのひら)を、天へと広げて。
墓石の周囲を吹く風に揺れる草花の上を、蝶が舞っている。
「 弱さを抱えながらも、私は生きたい。
今はまだ等身大の詩集を上梓したに過ぎない私ですが、
いつか、生涯をかけて綴り続けた詩と文を、
大切な手紙として、求める誰かの心に遺したいです。
それが心貧しい者である、私の夢です。
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