親父/虹村 凌
 

冗談なのか本気なのか、俺はわからない人間だった。
親父の言う事は全てだと思ってた俺は、冗談には聞こえなかった。
親父は一度も俺を認めてくれた事が無かった。
留学する時だって、
「トフルで500点取ったら認めてやる」って言ってたのに、
実際に俺が500点取ったら
「まぁ、まだまだだな。俺だって余裕で取れる」ってさ。
母や妹が言う様に、冗談にも聞こえなかった。照れ隠しにも聞こえなかった。
あぁ、親父は一度だって俺が誇った事を認めた事が無かった。
叩かれて伸びると思ったのだろうか。
否定されて伸びると思ったのだろうか。
幼くして叩き込まれてきた親父の言葉は、俺に叩かれて伸びる
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