親父/虹村 凌
親父が、俺を心配しているのは判る。
きちんとした職業を得て、自立して、飯を食える人間に成って欲しいんだって、
常にそう思ってる事は判る。知らない訳じゃない。
親父は子供を産む気は無かったそうだ。
俺はこの世に生まれる事すら危うかった人間だったんだ。
母方の祖母との話し合いの上、俺と妹が生まれた。
俺達は、生まれてこなかった可能性が大きかった。
それだけで、何か生まれて来て良かったって思うんだ最近。
でも罵倒されてコケにされて駄目出しされて否定され続けて来た。
剣道で三段取った時だって、一応は褒めてくれたけど、
「でもまぁ昔の3段に比べたら大した事無いよな」って言った。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)