水族館/七生
 
から

気が付くと随分遠くまで来ていた。
どのくらい?ずっと遠く。その遠く。
ふと顔上げるとガラス張りのショーウインドウに私が写っていた。黒いノースリーブのワンピースに青いミュールが白く光って映っている。
じっと自分を眺めているとなんだか自分ではないものが見つめ返しているような錯覚に陥る。
ほんとうにわたし?
お前はずっと私を付回しているだけではないの?
そうやって醒めた愚かな眼差しで、その青いミュールを踏みつけるように私を踏みつけながら、ずっと付回しているだけなのではないの?

ああ、とてものどが渇いた。沢山歩いたから。
周りを見渡すと少し行った先に自動販売機が見えた。

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