水族館/七生
の頃にわたしはもう居ない。
ミュールはとても繊細なデザインで、細くて高いヒールと足の甲を申し訳程度に包むスパンコォルたち、スパンコォルは濃い青色から白に近い水色までが魚の鱗の様に整然と並んでいる。
それが光に当たるときらきらと輝いてとても綺麗だ。
夏の日差しはとても強くて、よりいっそう輝かせる。
アスファルトの上にくっきりと濃い影を落とし、その上を青いミュールが踏みつける。
蝉の声は音の壁となって遠くに聞こえる。
何処へ行く当てもないけれど、ただただ急いでみる。
だって青いミュールには急ぎ足が似合う。
魚達がきらめくように早く。
ずっとずっと先まで行かなければいけないのだから
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