「 ひとくちの月。ふたくちの夜。 」/PULL.
める。
寝待月は枕を高くして、
安らかな眠りを楽しむのも、
好いかもしれぬ。
更待月は更にもう一夜待つ。
それさえも出来ぬ者は、
何をしても、
何処にいっても、
何も得ることはない。
さて、
下弦の月である。
これを食さずして、
月喰を語ることなかれ。
その扱いには細心の注意を、
払わなければならない。
まず傷一つ付けることなく、
夜から月を取り出す。
これが難しい。
餓えた月の獰猛さは、
聞き及んでいるだろう。
ジョルジュ・メリエスは月に、
ロケットで穴を空けたが、
あれは満月だから許されたのだ。
もし欠けた月であったならば、
生きて帰
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