書かれた−祖母/音阿弥花三郎
 
まず死を見に行く
コントロール出来る死をいただく
痴呆症の祖母から
工事現場でつまづく
茶色の家並みのくねる道に隠されている町
工事現場でつまづく
痴呆症の祖母から
コントロール出来る死をいただく
まず死を見に行く

 *

祖母の呼ぶ声が聞こえる。
こどもは家と家に挟まれた。
見上げると黒い軒があった。
こどもはその色に漏らしてしまった。
温かみが腰の周りに絡んで来ると
足元には溜りが出来始めた。

家の中は冷えきっていた。
その中で祖母は小遣いを用意して待っていた。
糞とスルメも用意し待っているのだ。
こどもの掌の中でそれは黄金色に輝いた。


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