サハリーニャ/クリ
 
は憎しみではなく、友情と言えるものだった。二人が猫のミケの墓を作って拝んでいるのを見た人は誰も、姉妹のように感じたはずだ。 両親は不思議にも、そんな二人をあえて引き離そうともしなかった。
 家の前で千代を見かけたとき、父親はしばらく考えてから「おいで」と言った。千代は無表情のままついてきた。母親が、持っていきたいものはあるかと尋ねたが、千代は「アッチない」としか言わなかった。
 その千代が船には一緒には乗れないと言われた。「名簿が一緒じゃないから」と。どんな名簿にも千代は載っていないだろう。父親が千代を連れていこうとしたのは、全くの善意でしかない。少なくとも珠恵はそう考えている。これ以上千代
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